お知らせ

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2025.04.25

植木屋さんの柏餅話

5月といえば、端午の節句。

こどもの日には、柏餅や粽をいただきますよね。

この柏餅、植木屋さんにとっては

「柏の葉で巻く」ところが

とっても興味深いお菓子なんです。

 

柏の葉っぱは縁起物

 

柏は、ブナ科コナラ属の植物で

「ご先祖が常緑樹だった」落葉樹です。

 

常緑樹の葉は硬くて丈夫ですが

光合成の効率はさほど高くありません。

そのため年間の日照時間が短い地域では不利だったため

徐々に光合成効率の良い落葉樹へと進化していきました。

 

落葉樹は、秋冬に日照時間が少なくなってくると

葉っぱの付け根に「離層(りそう)」という

切り取り線みたいなものを自分で作って

古い葉っぱを落とす準備をします。

 

しかしここで柏の木は、

離層を行った後も葉っぱを落とさずに

ずっと枝に葉を残したまま冬を越します。

 

そして春になって、新しい葉っぱが芽吹き始める時に

まるで世代交代をするかのように

ようやく古い離層した葉っぱを落とすという

ちょっと面白い特徴をもっているのです。

 

昔の人たちは、この柏の特性を知っていて

「家系を繋ぐ、子孫や家運の繁栄の象徴」として

縁起物のお菓子、柏餅を考えたのでしょう。

 

ちなみに、柏の仲間のクヌギの木なども

冬には離層だけしておいて

春になってから葉っぱを落とす樹木なのですが…

 

柏の葉っぱが程よく青く香るのに対し

クヌギの葉っぱは香りも少なく、タンニンが多めで

食品を包むには渋みがでやすいんです。

 

昔の人が、クヌギ餅じゃなくて柏餅にしたのは

自然に対する細やかな観察眼と、グルメな探究心が

あったからなのかもしれませんね。

 

葉っぱの表裏、そして餡子も違います

 

柏餅の葉っぱの「表・裏、どちらを外側にするか」には

地域やお店の流儀によって違いがあり、

関東では「葉の表が外側(つるつる面)」

関西では「葉の裏が外側(ざらざら面)」が多いです。

 

そして柏餅の中身にも地域差があって

関東以北では、味噌餡やこし餡が多く、

中部や近畿地方ではこし餡かつぶ餡、

四国や九州地方では、つぶ餡が主流だそうです。

 

弊社でも関東っ子は、味噌餡かこし餡だと言っていましたが、

九州っ子は味噌餡の柏餅は食べたこともない状況でした…。

お雑煮みたいに、地域差が大きいお菓子だったんですね。

 

柏餅の葉っぱ、実は“柏”じゃないことも?

 

さらに大きな地域差でいうと

関東の柏餅は、柏の葉を使って巻きますが

関西以南では、柏よりも柔らかい山帰来の葉を

(サンキライ、またはサルトリイバラ)

使っていることがあります。

 

これは、関東以北では柏の木が多く自生していたのに対し

関西や西日本では、柏の葉が手に入りにくかったため

山帰来を用いたようで、植物分布を考えれば納得です。

 

 

以前、長崎ご出身のお客様が

「お庭に山帰来を植えて、端午の節句のお菓子に使うのが

我が家のふるさとの味なんです」と仰っていました。

 

お庭にある樹木とご家族の思い出、

季節ごとの習わしや食の楽しみは

地域によって、色とりどり。

植木屋さんにとっては、そんなお話を伺うことが

何よりのご馳走だったりするのです。

2025.04.13

樹齢60年を超える桜の再生プロジェクト ③ <プロのお仕事と地域のつながり>

桜の老木再生プロジェクトは

数十年もの年月をかけて大きく育った桜の木の

傷んだ枝や幹をしっかり切り戻すところから始めます。

 

この時、傷みかけの部分を中途半端に残してしまうと

良い結果にはつながりにくいため、

どこまで打つのか事前に目処をつけておくのも

重要な工程の一つです。

 

 

最高の足場

 

今回は、マンションの一角にある植栽エリアで

お日様をたっぷり浴びて大きく育った

4本の桜たちの処置をしています。

 

マンションの3階の高さほどに成長し

重なりあう大きな傘のように

めいっぱい枝を伸ばした桜たちに手を入れるため

植栽エリア一帯に足場を組んで作業を行ったのですが

この「足場」の出来が本当に素晴らしかったのです!

 

 

職人にとって嬉しい足場とは

 

ご縁があり、私たちと同じ横浜市青葉区にある

株式会社 善さまに、足場を作っていただきました。

 

現場を下見し、後日 足場の設営をしてくださるのですが

何が素晴らしいって、これが

私たち植木屋さんが「最高に作業しやすい足場」

だったことなのです。

 

四角い建築物と違って

不規則な形をした4本の桜たちのまわりに

バランスよく作業スペースを組み上げるのは

それだけでも大変なはずですよね。

 

それにもかかわらず、出来上がった足場は

私たち植木屋が複数人で登って

行き止まりなく適度に回遊できる作りで

みんなの作業をとてもスムーズに進められました。

 

そして、私たちが無理ない体勢で作業できたため

全部で3トンもの枝や幹を切り出し

地面までロープで釣って丁寧に降ろすところまで

安全かつやりやすく感じました。

 

足場設営の前に、私たちがどんな剪定作業をするか

担当者様とお話をしたのですが、

それでここまで仕事のしやすい足場を考えてくださるとは

まさにプロのお仕事、すっかり感動してしまいました…。

善さまが人気の理由がよくわかります。

 

 

チームで進める剪定作業

 

チェーンソーの歯の長さよりも太い幹に

(切るのがとても難しいのです)

いろんな角度から歯を入れ、少しずつ切り込んでいくメンバー。

 

切り取った部分を落とさないよう

しっかりロープをかけて支えるメンバー。

 

地上2、3メートルのところから

切った桜を安全に地面まで降ろせるよう

小ぶりなチェーンソーを使って運搬用に加工するメンバー。

 

足場の上と下で協力しながら、木材を釣りおろすメンバー。

 

みんなの協力で、なんとか4本の桜の剪定が完了したのでした。

 

 

切り出した幹の一部は、地元消防団へ

 

先ほど少しお伝えしたように

「チェーンソーの歯の長さより太い木」というのは

一回歯を入れるだけでは切断できませんから

これを安全に切るには

それなりの技術と訓練が必要になります。

 

そこで当社では、こうした太い木材が出た時は

地元消防団の皆さんに、訓練用にお渡ししています。

 

というのも消防団は、火災時の消火活動、救助活動で

時にかなり太い樹木を切断しなければならないのですが

チェーンソーの歯よりも太い幹や枝を切るとなると

あらかじめ訓練をした人でなければとても対応できません。

 

でも、そんなに立派な太い木材は

この近隣ではそうそう手に入らなくて

普段はホームセンターで買える木材でしか

練習できないそうなので、

このように特に太い木材が発生した時は

救助訓練に役立てていただけるよう、都度お声がけをしています。

 

いい足場のおかげで

大量の重たい木材もスムーズに降ろせましたしね!

 

こんなふうに、植木屋さんのお仕事を通じて

地元に貢献できるのは嬉しいものです。

私たちも長年地元でお仕事をさせていただいていますから

このような繋がりを大切にしていきたいと思っています。

 

次回は、植木屋さんにとっても大切な

素晴らしい「土」の作り手さんをご紹介します。

2025.04.10

ゴールデンウィーク休業のお知らせ

平素より弊社をご愛顧いただき、誠にありがとうございます。


ゴールデンウィーク中の休業期間について

以下の通りご案内申し上げます。


 

【ゴールデンウィーク休業期間】


2025年5月3日(土)~2025年5月6日(火)


 

2025年5月7日(水)より営業を開始いたします。


休業期間中にいただきましたお問い合わせにつきましては


営業再開後、順次対応させていただきます。


皆様もどうぞ良い連休をお過ごしくださいませ。

 

<写真:クサカゲロウの卵>

クサカゲロウの幼虫は、アブラムシなどを食べてくれるので

農家さんには害虫の天敵で、ありがたい虫さんです。

2025.04.06

樹齢60年を超える桜の再生プロジェクト ② <オーナー様と桜たちのお話>

今年の年明けは、大きく桜を打ってほしいという現場が

いくつかありました。もう時代なのでしょうが

傷んでいる桜が増えてきたのを感じています。

 

桜の木の作り直しをする場合、

それこそ樹高12m、15mという

3階建てのお家よりも背の高い樹を

地上3mくらい、概ね平屋くらいの高さまで

大きく切り戻します。そして弱ってしまった根に

数年かけてゆっくりと力を取り戻してもらうのです。

 

マンション住民の皆さまと桜たち

 

今回、桜の再生プロジェクトを実施させていただいた

マンションには、敷地内に沢山の桜があり、

毎年春に住人の皆さまが美しい花を楽しまれていました。

そして4年前にも、一部の桜に同じ処置をしています。

 

こちらでは、20年ほど前からずっと、当社にて

お庭のお手入れをさせていただいてきましたが、

ここ何年かで、気候など様々な要因から

桜たちが徐々に弱ってきていることをお伝えしており、

その度合いを見ながらお打ち合わせをしてきました。

 

4年前、敷地内全部の桜を一度に作り直そうかという

お話が出たこともありましたが、そうすると上記の通り

全部をかなり大きく切ることになってしまいます…。

 

それをお伝えしたところ、

皆様、それはあまりにも寂しいということで、

傷みの進んでいた桜たちだけを先に処置して

まだ少し元気な子達は

しばらく様子をみることにしたのでした。

 

4年前の決断と、今

 

昨今の酷暑もありますし、低気圧の瞬間風速も年々増して

残した木が裂けてしまう箇所がでてきました。

そして実際に登ってみなければわからない場所に

縦に割れが入ってキノコが大量につき、

とうとう今年は残りの桜にも

手を入れてあげたほうがいいねということになったのです。

 

植木の大掛かりなお手入れには

費用や工期、庭園の安全面の問題だけでなく

その植木たちに向けたお住まいの方々の想いもあります。

 

桜の傷みの進行度合いや、処置すべき本数を観察し、

住人の皆さまのお考えを伺い、

そして樹木医会の方々とも地域事例の情報交換をして、

この桜たちにもう一度元気を取り戻してもらうため

今、庭師として出来うる手立ては何か

都度ご一緒に考えていけたらと思っています。

 

再生の日、そして住人の皆さまの想い

 

3月中旬、これから剪定する桜たちは、弱っていながらも

ぽつぽつと枝に蕾をつけてくれていました。

 

これ以上後になると、樹木が一気に水をあげ始め

切り口から樹液が大量にでて、そこから傷みやすくなるため

残念ですがこのタイミング迄に剪定しなければなりません。

落ろした木の断面に触れると、既にほんのりと湿り気を感じます。

 

剪定する中で出た、かわいい蕾が付いた桜の枝は

住人の方達にお持ちいただけるよう

お庭に並べておきました。

 

どれにしようか親子で選びに来る方、

40年前に入居してからの桜の思い出を語ってくださる方、

自宅の窓から見える桜の素晴らしさを聞かせてくださる方。

 

そのご様子に

この桜たちが皆さんにとても愛されていることが

私たちの心にも沁み入ってきたのでした。

 

枝いっぱいのエール

 

さて、以前に再生プロジェクトを施した桜たちは

どうなっているでしょうか?

このタイミングだからこそ、はっきり分かりました。

 

何と…4年前に処置したほうの桜たちは

その日 見上げた枝じゅうに

無数の蕾をつけていたのです!

今年手を入れる子たちの5倍以上もありそうです…。

 

桜たち、土中の菌たち、本当によく頑張りました!

こうして桜の再生プロジェクトは

何年もかけて見守っていくのですが

枝いっぱいの蕾たちに

私たちも何だか勇気づけられた心持ちでした。

 

次回は、桜の再生プロジェクトを支えてくださる

素晴らしいプロの皆様のお話をお伝えしていきます。

2025.03.30

樹齢60年を超える桜の再生プロジェクト ①

この週末は、東京や神奈川の桜が満開でした。

今日あたり、お花見散歩にお出かけになった方も

多かったのではないでしょうか。

 

毎年わたしたちを楽しませてくれている桜。

枝いっぱい、一斉に花を咲かせるその姿には

いつだって心を動かされますよね。

 

 

大切にしたい、歳を重ねた樹木のケア

 

さて、いま日本各地で咲いているソメイヨシノは

戦後から高度経済成長期にかけて

街や公園、学校などに大量に植樹されたものが多く

樹齢60〜70年以上になってきました。

 

人間もそうですが、桜の木も歳を重ねていくと

体力が落ち、環境の変化に対応しにくくなることがあります。

私たちがマンションや一戸建てのお庭の剪定をする際にも

弱った桜についてご相談を受けることが増えたように思います。

 

そんな桜をどうやって回復させられるか

現在各地で様々な試みが行われています。

日本樹木医会 神奈川県支部の樹木医の皆様にも

お力添えをいただきながら

私たちも少しずつ、老齢の桜の再生の取り組みを

進められるようになってきました。

 

というわけで、今回からシリーズで

横浜市内のあるマンションで実際に行った取り組みをもとに

「桜の再生プロジェクト 〜桜の生き生き剪定〜」について

お伝えしていきたいと思います!

 

 

再生プロジェクトって何をするの?

 

この再生プロジェクトでどんなことをしているのか

かなり大まかに書きますと

◆ 桜の状態の診断

◆ 再生のための強めの剪定を行い、根の充実をはかる

◆ 土壌改良(地中に空気を送り込むエアレーション、

    桜を助ける土中菌の活性化、根元全体の養生)

こんなことをやっていきます。

実際のところ、桜の大掛かりな再生には

手間もコストもかかります。

 

ケアすることで桜を元気にし

寿命を延ばす方法の研究が進んできているものの

それがどういう考え方や手法なのかは

あまり詳しく知られていないのが現状です。

 

もちろん、桜の状態や地形によっては

対処出来ないこともあるのですが

ここで再生プロジェクトの実例をお伝えすることで

手当が間に合って、元気を取り戻す桜が

一本でも増えるなら、それは良いことだなと思うのです。

 

「うちの桜の状態が気になっているけれど

 どうしたら良いのかわからない…」

「近所で桜がバッサリ切られてるけど、どうして?」

そんな方々に、この連載が届いたら嬉しいです。

 

そして桜の再生のお話を通じて

「人間と同じく、樹木も健康が一番なんだ!」って

もっと緑の命を身近に感じてもらえますように。

2025.03.05

お庭の小さな訪問者 〜実生の植物と仲良くするには?

2月下旬の横浜は、暖かい日が続いていましたが

3月に入り、雪が降るほどの寒さが戻っています。

 

ここ数年、庭木にも気候変動の影響が強く出ている折

こうして昔ながらの「三寒四温」があり

少しずつ春に向かっているのを感じると

それだけで何だか少しホッとするのは私だけでしょうか。

 

雪や雨で、外のお仕事ができない日は

お庭屋さんは鋏を持たずに

次のお仕事の資材の準備、道具のお手入れ、

自分の体を休ませてメンテしておくのも大事ですし、

苦手なデスクワークを粛々と進めたりもしています。

 

お庭の新顔「実生」のお話

 

さて、皆さんのお庭には、自分では植えていないのに

知らないうちに生えてきたお花や木はありますか?

 

水やりやお庭掃除のときなどに

何かの芽が出てきたなと思っていたら

年々育ってそのまま立派なお庭の一員になったり…。

 

これは「実生(みしょう)」といいまして

どこかからお庭に種が来て、それが育っているものです。

 

種が風で飛んでくることもありますし、

あるいは鳥さんが何処かで植物の実を食べて

種入りの糞を落としていくこともあります。

そして環境が合えば、そこで芽吹いて育つわけです。

 

まずは何の植物なのか観察してみましょう

 

私たちがお伺いするお庭でも、様々な実生の植物を見かけます。

あるお客様のお宅では、自然に運ばれてきた種から

夏から秋にかけて薄ピンク色の花が咲く芙蓉や

秋に黄色い花を咲かせる石蕗が元気に育っています。

 

また、あるビルのお庭では

冬になると赤い実をつける樹木のクロガネモチや

黒い実が漢方薬にも使われるネズミモチの木が

かなり大きく育ち、隣地に越境しかかっていました。

 

他には、マンションのお庭で

ちょうど良い場所に百日紅が生えて

毎年お住まいの方々が花を楽しまれていますし、

一方で、大きな樹に黒っぽい実をつけるクスノキが

他の木の足元から芽吹いているのを見つけまして

これはいずれお引越しさせないと…と思っているところです。

 

新しい芽が出たばかりの頃は、それが何の植物なのか

分からないことも多いでしょう。

葉っぱが出て少し大きくなったら

今はスマホで写真を撮って

アプリを使うと(Googleレンズなど)

植物の種類を簡単に調べることができます。

種類と特性がわかったら、このまま育ててよいか考えてみます。

 

強く枝や根を張るタイプの子なら

ご自宅の家屋、基礎、塀、お隣さんなどに干渉しないか、

大きくなってからだと対処が大変になる場合もあります。

案外、家の裏手でなかなか気づかないケースもありますよね。

 

そして今のお庭の、周りにいる子たちとのバランスや

相性も大切です。

いずれ伸びて、植物同士が干渉してしまうなら

可哀想ですが、抜いたほうがよい場合もあります。

植木鉢に移して育てる手もあるでしょう。

 

特に支障がなければ、お庭の新しいメンバーとしてお迎えし

温かい目で成長を見守ってみてください。

自然界でも、植物はこうして種を運び

仲間を増やしていくわけで

自分のお家にもそんな新たな芽吹きがあるというのは

なかなか素敵なことだと思います。

 

鳥さんも憩う、落ち着けるいいお庭なのでしょうから。

 

<画像>

上:百日紅(さるすべり)

中:楠の実

下:石蕗(つわぶき)

2025.02.25

もうすぐ卒園式。お庭とこどもの手の話。

二十四節気でいう”雨水”の頃は、雪が雨に変わり

梅の見頃を迎える時期と言われています。

数年前に植樹した、あるマンションの梅の木も

可愛い花が甘い香りを漂わせてくれていて

お手入れに伺うと何だか嬉しい気持ちになります。

 

さて、当社では横浜市の鳩の森愛の詩保育園さんにて

園庭のお手入れや植樹、植栽、畑づくりなどを通じ

こどもたちのワークショップのお手伝いをしています。

この時期になると、卒園式が近づいてきて

一年間のいろんな出来事が思い出されるのです。

 

大根から育てる、たくあん作り

 

年末の寒い時、園のみんなでたくあん作りをしました。

こどもたちが園の畑で育てた大きな大根、小さな大根、

それぞれに気に入った大きさのものを選んで

順番に樽の中に並べていきました。

 

そこに糠や塩、砂糖を使い、大根が見えなくなるまで

何層にも何層にも重ねて埋めていくのですが

糠を直接触るのはこれが初めてという子がほとんどです。

最後に蓋をして、大きな石を重し代わりに乗せ終わった時の

みんなの満足そうな顔は忘れられません。

 

試食会では、甘みがあるのと、塩味が効いたのと

2種類の美味しいコクのあるたくあんが出来上がり

今年も大盛り上がりでした。

 

 

門松とこどもたち

 

それから年明けに、保育園へ

門松を引き取りに伺った時のことです。

 

毎年、大人の背丈ほどもある立派な門松を

飾らせていただくのですが

よく見ると竹の一部の色が

薄くなっているのに気づきました。

 

そういえば先生たちが

門松がどんなふうに出来ているのか触って見てみてね、と

こどもたちに話していたんですよね。

それは今時のこどもにとって

とても珍しい体験だったのかもしれません。

 

おそらく年末年始にかけて、この門松はきっとたくさん

みんなに撫でてもらったのでしょう。

門松は歳神様の依代ですから、園にいらした神様も

きっと喜んでくださっているんじゃないかと思うのです。

 

 

こどもたちの手は

 

保育園のこどもたちはとても好奇心旺盛で

みんな人懐っこく接してくれます。

 

こちらの園の方針で

全員で号令をかけて同じことをするというより

各々のペースで自分が取り組みたいことに向かっていて

ワークショップを見ていると

みんな違って本当に面白いなあと思います。

 

土をこねたり、植物や野菜を育てたり、

お庭の様々ないのちに触れる彼らの小さな手は

妙に湿気があって、あたたかくて、

時にこちらの指をぎゅうと握ってきたりします。

 

園のお庭は、自然とこどもたちが出会う場所。

こどもたちがたくあんを仕込んだ小さな手で

命にふれたあの瞬間を、いつか思い出してくれるでしょうか。

 

私たちは、そんな体験が

みんなの心のどこかで生き続けることを願い

今日も庭に向き合っています。

 

植木のお世話をし、土を作り石を組む、

その先の未来に、大人になった彼らの心がほっと憩える

そんな素敵な場所を残せたらと思うのです。

 

みなさんにとって、自然にふれた最初の思い出は

どんなものだったでしょうか。

2025.02.05

百花の魁、梅が彩る日本の春


立春をすぎ、そろそろ弊社の近くでも

梅が咲く頃となりました。

都内の小石川後楽園などでは梅まつりも始まり

早咲きのものがぽつぽつ開き始めているようです。

 

梅の種類、実梅と花梅

 

古来より、梅は春の訪れを告げる花として

愛されてきました。

江戸時代に盛んに品種改良が行われ

今では300以上もの品種が存在するとされています。

 

これらの品種は

食用として利用される「実梅(みうめ)」と

観賞用として栽培される「花梅(はなうめ)」に

分けられます。

 

実梅には、南高や白加賀、豊後などの

代表的な品種があり、皆さんも梅干しや梅酒で

召し上がっていることでしょう。

花梅に比べて実梅の枝はがっしり太めなことが多く

花を咲かせるよりも実を成らすほうが

梅がたくさんのエネルギーを使うのがよく分かります。

 

花梅も本当に多くの種類があります。

「御所紅」「月影」「古金蘭」…と

ひとつひとつ名前の響きが美しく

日本語って素敵だなと改めて感じさせてくれますね。

 

梅の剪定時期

 

庭木の梅で、1年に1度だけお手入れをする場合は

秋の落葉後から、花が咲く前の冬の時期にかけて

剪定をします。

もし年に2回お手入れできる場合は、夏頃にも

長く伸びた枝を切らせていただいています。

 

梅の枝には、一年間で何十センチも

勢いよくまっすぐ伸びるものがあり

これを徒長枝(とちょうし)といいます。

徒長枝は主に春夏に出て、花芽はあまりつきません。

伸びる分、どんどん樹の栄養を使ってしまうので

樹全体の生育バランスから見て不要な分は

夏の剪定で根本から切っておきます。

 

徒長枝を秋冬の剪定で切ってもよいのですが

枝が出たての夏頃に切った方がまだ細いですから

切り口は小さくて済みます。

人間と同じで、樹木も切り傷が大きいと

負担になりますからね。

 

梅の姿もいろいろです

 

梅の枝は、お日様の光を求めて奔放に伸びていきます。

その為、枝同士が交差したり重なり合ったりして

下の方の枝は陽が当たらず、枯れてしまうことがあります。

 

そこで私たちは全体の姿を見ながら

枝の向きや重なりを整理して

樹が元気になるようお手入れをします。

品種により枝の形も違いますし、

お庭の場合は、周囲の木との兼ね合いも大切です。

 

それに、花を楽しみたいのか

たくさんの実を収穫したいのかで

剪定方法も変わってきますので

お客様と相談しながら進めています。

 

梅の枝の中には…

 

梅の剪定をした後、鋏や鋸を洗うと

赤い色が出るのをご存知でしょうか?

これは、梅の赤い花色の素である

アントシアニンの色なんです。

 

不思議なことに、白い花の梅の木にも

この色素が含まれていて

やはりほんのりと赤が出るんですよね。

昔からどちらの木も草木染めに用いられてきました。

 

花もよし、実も美味で、枝からは美しい色が採れる…

梅って本当に万能な樹なのです。

2025.01.30

一番身近な、大きな命。街中の樹木の話。

もうすぐ立春、でも今週末は雪の予報です。

この時期は空気がカラッとしているので

晴れた日に樹々を見上げた時には

空の青さを格別に美しく感じますね。

 

さて、私たちは一戸建てのお庭だけでなく

マンションなどの大きなお庭も

お手入れさせていただいています。

大きな建物や広い空間には

かなり背の高い樹も立っていますので、

定期的な樹木の安全点検とメンテナンスは

欠かせないのです。

 

樹木は生きていくうちに

「ここの枝は、いらないな」と

自分でどこかに枯れ枝を作るものなのですが

「いらない」とスイッチが入って

枝が落ちるまでの期間は、樹種によって様々です。

 

例えばケヤキ等はそのスピードが早い樹なので

数年に一度は木に登って点検をします。

木の下から見ると細そうな木の枝も

登ってみれば大人の腕くらいの太さがあり

これが落下すると危険ですから

登ってチェックする必要があるのです。

 

この時に、クレーンなどで上がって

確認できれば良いのですが

そういう車が使えない時は私たちが人力で登ります…。

登り手と地上にいる者の連携も重要です!

上手に登って、木にも人間にも負担少なく

作業できるよう、日々技術を磨いています。

 

背の高いビルやマンションがあると

建物の間を吹き抜ける風の勢いは増します。

(いわゆるビル風です)

樹木たちはいつもこの風を和らげてくれているので

風の強い場所では、彼らの負担も大きいのでしょうね。

街中で立派な木をみると何となく

今日もありがとう、って言いたくなるんですよ。

 

他にも、もう少しすると開花が楽しみな

桜の木など、特に大きめの古い樹は

台風の際に枝いっぱいに風を受けてしまい、

耐えきれずに枝や幹に亀裂が入り

そこからキノコが生えたりして

樹が傷んでしまっていることもあります。

そういう場合は、大きく切り戻して

改めて樹の状態を整え、作り直すこともあります。

 

生き物相手ですから、最終的には

その樹の生命力次第なのですが

色々考えて手当や対処をしてあげることで

少しずつでも元気になってくれたらと思っています。

 

昔はこれほど、年に何度も

苛烈な暴風雨がくることはありませんでしたよね。

いずれにせよ、お天道様には逆らえませんので

その都度、知恵を絞るお庭屋さんなのでした。

 

都市や街中に立つ樹木たちは

私たちが一番身近に接する巨大な命です。

立派な姿の彼らも

時に黙って困っていることもありますから

声なき声を聞きながら

気にして見ていてあげたいなと思うのです。

 

写真上:ケヤキ

写真下:六義園の桜

2025.01.17

貝塚伊吹と、お庭のひそひそ話

昨日は気温がぐっと下がりましたね。

こういう寒い時期は、お天道様の力が

本当にありがたいです。

お庭のお手入れの際

陽の当たる場所を担当するのと

日陰になっている場所を担当するのでは

体の冷え方が全然違います。

 

さて、悴んだ手を温めつつ鋏を握り

日々植物たちと向き合うお庭屋さんは

お手入れを始める前、またはお手入れしながら

植物たちの様子をじっと観察しています。

 

彼らは人の言葉ではおしゃべりしませんが

その様子から見てとれることもあります。

 

もちろん言いたいことの全てはわからなくても

「何かあるんだろうなあ」と

心に留めておくだけでも

後日のヒントになったりするのです。

 

このような植物との会話はいろいろあります

 

例えば、大きな木の根っこが、土の表面に

上がって伸びてきてしまっているのを見れば

「何か下に行きたくない理由があるんだな、

 下に何かあるのかな」

というふうに考えます。

 

「ここの土が乾燥しすぎている?

 下に固くて通気のよくない土や石があるとか?

 それとも地盤が浅いのかな?」など…

 

すぐに何かできなくても

植物たちの声をいったん聞いておきます。

スタッフ同士で

「この子はどうしたいのかねえ」なんて話もします。

 

他にも先日、貝塚伊吹(カイヅカ イブキ)という

庭園や生垣によく植えられている

背の低い桧の仲間の木があるのですが、

同じ1本の木なのに、枝や葉っぱの形が

場所により全然違って伸びている子がいました。

(写真の枝は、同じ貝塚伊吹の木から剪定したものです)

 

これは「先祖返り」などと言われる現象で

園芸用に人間が品種改良したものが

何らかの理由で昔の姿に戻っているものです。

 

貝塚伊吹は、寒さにや乾燥にも割と強くて

お日様が大好きな植物です。

元々は、伊吹(イブキ)という野生の植物をもとに

改良されて生まれました。

 

元の野生の伊吹は、葉っぱがトゲトゲしていて

小枝も少しぐねぐねとした姿をしているんですが

どうもこの子は一部の枝だけ

祖先に近い形質(かたちや特徴)を

とろうとしているようなんです。

 

植物は、品種改良をしても

祖先の性質が遺伝子に隠れて残っていることがあり

何かの拍子にそれが表に出てくることがあります。

 

その原因は定かではなく、

強すぎる日差しや乾燥、強めの剪定、根の傷みなど、

植物にストレスがかかると

祖先の形質が現れやすくなるといわれています。

 

先祖返りをしている貝塚伊吹を剪定しながら

「何かストレスがあるのかな?

 それとも昔の姿になった方が

 この子にとっては何か、都合がいいのかなあ」

そんなことを考えました。

剪定した枝は、桧のよい香りを漂わせています…。

 

何となくですが…

剪定しながらスタッフ同士で話していることも

植木たちはちゃんと聞いているような気もするので

「サインに気づいているよ」という意味で

そっと考え事を呟いてあげるのも

悪くないかなと思っています。

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